02
涙を流しきった二人の姉がシュガルの抱擁から解放される。
「見苦しい姿を見せたわね」
「今のことは他言無用よ」
涙の痕も無い二人の顔には確かに赤色の帯が巻かれていた。それを確認したシュガルはニコリと笑む。
「元よりそのつもりですよ。お二人の涙は我々三人だけのものです」
その笑みはどこか含みがあったが、二人の姉は小さくを息を吐くことで返事とした。
「ラフム、ラハム。これからどうする。統治者はこの世界を去った。ならばこの世界を誰かが統治せねばならない」
玉座の前まで近づいたエンキドゥが腕を組んだまま二人の姉に問う。彼の言う通り、この世界から統治者が消え去ったのだ。それも統治するに最も適した原初がいなくなった。
「「そうね。ならば私たちが統治する」」
そう、彼女たち、ラフムとラハムは原初の始まりの仔であり人類祖の生みの親。その躰は人類と言うよりは獣に近いが、それでも二人の人類祖を生み落としたことに違いはない。この人類の世界を統治するに相応しいと言える。
「「これより、我々原初が始まりの仔、ラフムとラハムが「トラウェル・モリス」を統治していく」」
玉座より立ち上がり、二人の姉は宣言する。
「「我々に依る、世界再生を始める」」
そう、後の世に語り継がれる「創世」とはこの時点のことを言うのだ。
偉大なる二人の始祖に依る「世界再生」こそが「創世」と呼ばれる。
疲弊しきった世界を統治し、立て直し、発展させた偉大なる始祖。
始祖ラフム。
始祖ラハム。
再生世界は、今この時より始まる。
「手始めに共和国へ行くわ」
「ん? 共和国ってどこだったかしら?」
ラフムの横でラハムが首を傾げた。




