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「今更何しに来たのだ! お前が来た所で何も変わらない! お前には何一つ救えない! 「異世界勇者」にさえ劣るお前には!」
屍気纏う異形の大剣を受け止められた屍の鎧の戦士が吼える。
「そうだな、今の私ではなにも救うことは出来ないだろう。「異世界勇者」を前に何もできなかった私には、この子たちも、お前たちも救うことは出来ない」
屍気纏う異形の大剣を受け止めたままのティアマトが屍の鎧の戦士を見上げた。言葉とは裏腹に彼女の目には諦めなど微塵も感じられない。
「か、母さん…………おか、お帰り………お帰りなさい!」
小さな背中を見上げるウガルルムは、ボロボロと泣きながら母の帰還を祝福した。
「ああ…………ただいま」
娘の言葉に振り返ることなく、答えるティアマト。彼女の目に映るのは今なお屍気纏う異形の大剣を力強く握りしめる屍の鎧の戦士だけだ。
「なら何故戻って来た! あのままエンキと共にどこかへと消えていればよかっただろうが!」
より一層強い力で屍気纏う異形の大剣を振り下ろそうとする。しかしティアマトにしっかりと掴まれた屍気纏う異形の大剣は動かない。
世界を砕く、刃を今で一つとなった人類祖の刃が何故届かないのか。心の砕かれたはずの原初が今になって何故この場所に現れたのか。屍の鎧の戦士にはわからない事ばかりが起き、頭の中には乱気流のような思考が渦巻いていた。
「お前たちの言う通り、私はあのまま消えてなくなった方が良かったのかもしれない。しかし、私にはやらなければならないことがある」
ビキッ。
屍気纏う異形の大剣に大きく罅が入る。




