03
ムシュマッヘがラフムとラハムの部屋までやって来た。
コンコン。
「「誰?」」
不機嫌そうで、熱っぽい二人の声がノックに応える。
「ムシュマッヘだ。伝えたいことがある」
「「今でないとダメかしら?」」
依然不機嫌な二人の声にムシュマッヘは溜息を吐く。いつもならこの時点で踵を返していたが、今回はそういうわけにもいかない。
「ダメだ。入るぞ」
そう言ってドアを開けたムシュマッヘは後悔した。気持ちが急いていたのは間違いなかったが、部屋に入るのに主の許可はとるべきだった。
「はぁあ――――いや、コレはワタシが悪かった。すまない。とりあえず、服を着てくれ。目のやり場に困る」
二人から目を逸らしながらムシュマッヘは申し訳なさそうに言う。
ラフムとラハムは部屋に大きなツインベッドの上で抱き合っていた。だからムシュマッヘの来訪に機嫌を損ねたのだ。
「そうね。着替えさせてもらうわ」
「そうよ。今回は貴女が悪いわ」
二人は口々に言うと、一糸纏わぬ姿でベッドから立ち上がると、クローゼットへと向かう。
陽を拒絶し続けた絹の様な白肌には一切のシミはない。窓から射す月光を纏う姿は躰自体が青白く発光しているかのように見える。
「「で、話って何?」」
咲和が着ていたような漆黒のワンピースドレスを纏った二人は、ベッドに腰掛けた。その真っ黒な視線は真っ直ぐにムシュマッヘを射抜いている。それが行為を邪魔されたことによる怒りでないことをムシュマッヘはわかっていた。しかしそんな怒りの感情だったならどれだけよかったか、とも思ったのだ。
「クルールの王神の占星による予測だ。それを伝えておく」




