03
それは死が形を成したのモノ。
人の山は燃え盛り、ドロドロと崩れる。
しかし、鳴動し、泣き、啼き、鳴き、悲鳴。
声はいずれ割れ、音となって空気を裂く。
人だった者、かつて隣人を愛したはずの人は、隣人と共に成った。
「コレが、死だと言いたいのか?」
「コレが、終わりだと言いたいのか?」
「はい。こんなもの、終わりだと言わずして、何を終わりと言うんですか? だってコレ、もう人じゃないですよね? こんなのが人であるはずがないですよね? 誰かの上でのうのうと生きて何が人ですか? 誰かの死体を踏み台にして何が人ですか? 悪逆を為した者に対して媚び諂って何が人ですか? 隣人を愛したはずの人は既にありません。ココにあるのは只の人の塊ですよ。もう、人なんかじゃありません。私の武器です」
ソレは構成するパーツを確認することで、辛うじて人だったと認識できるモノだった。
四肢は腕と脚が幾重にも絡み合ったもので出来ていた。
顔に見える部分は人々の顔が引き伸ばされたものだ。大きく膨らんだ腹にも人々の顔が浮かび上がり時折悲鳴のようなものを上げた。
躰中から覗く目玉はぎょろぎょろと周囲を舐めるように見渡している。
躰よりも遥かに大きい翼は大量の皮膚の継ぎ接ぎで構成されている。
その他の部分も全てが焼き爛れた人間の死体の集合体だ。
ソレは死の形。
誰もが恐れ、誰もが嫌悪する、災厄の象徴。
ソレは咲和の世界でも災厄を為すモノとして語り継がれる存在。
その巨大な翼で大空を舞い、その牙と爪は騎士の鎧を悠々と裂き、吐き出す炎は堅牢な城砦を易々と溶かし尽す。その躰は金剛ほどに強固な鱗で覆われ、その尾は一薙ぎで家々を粉砕する。
そう、それは「竜」と呼ぶに相応しい形を成していた。




