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「ほらぁあ、こんなものからも逃れられないじゃないっすかぁあ」
先ほど同様に「サナ」は手を向けられた途端に動けなくなる。ニンティの魔術が「サナ」の魔術耐性を遥かに凌駕していた。
「こ、こんなもの!」
「じゃあ、これはどうっすか?」
「サナ」に向けていた手を握り締める。すると、彼女の躰はミシミシと音を立て始める。
「ン、ッカハ!」
終ぞ、「サナ」は口から大量の血を吐き出し、振り上げていた戦斧を落とした。それをみたアンシャルとキシャル、テューポーンとイヌンダーティオーは一斉に駆け出そうとした。しかし、それをニンティは視線を向けただけで制止して見せた。
「ほらね? 異世界勇者様ではあーしには到底敵わないんすよ。理解出来たっすか?」
そこまで言って、握った手をパッと開いた。すると「サナ」の拘束は解け、その場に崩れ落ちた。
「じゃ、話したいことは粗方話したんで、ティアマト貰って帰るっす。では、ばいならー」
目を覚まさないティアマトを小脇に抱えながら、小さく手を振ったかと思うと、ニンティは音もなく霧となって消えた。




