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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
3章 演説

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05

「二国が戦争をしているのは、私達にとって実に好都合です。この機を逃すことなく、漁夫の利を狙いましょう。

 まず、私達は戦線境界線へと移動し、そこで、帝国を潰します」


 帝国を狙うには当然理由があった。

 帝国は機械国家。つまり、「フィクティ・ムンドゥス」にない技術を保有していることになる。先に王国を潰した場合、咲和たちの動向が帝国にバレることになる。そうなれば、帝国は咲和たちに対抗するために軍事力を強化するだろう。そうなった場合、保有していない知らない技術を使われれば、少なくとも咲和たちの不利から戦闘が始まってしまう。スクリーンの映像からは第一次世界大戦期と同等の兵器が行使されているように見えた。

 第一次世界大戦の兵器となれば、「ティアマト」の尖兵たる十一の獣とて後れを取る可能性がないとは言い切れなかった。その為、帝国を早々に潰す。そして、その技術を奪取し、そのまま王国を陥落させようと考えた。


「かしこまりました。では、どのように動きましょう?」

 ムシュマッヘが言う。

「えーっと、皆には数人のグループで行動してもらいます。まず、お留守番をお願いするのは、姉さんたちとクルールちゃんです」


 クルールは十一の獣が末っ子。ウェーブの掛けられた金色の髪、宝石のような碧眼、人間の耳のある位置からは、山椒魚(さんしょううお)のようなエラが生えている。変幻自在に姿を変えることができる人魚である。本来の姿では、下半身には金魚のような華やかな尾ひれが生えている。


「お留守番ですか? 戦闘能力がないから?」

 バシュムの左隣に座っているクルールが手を上げて発言した。

「それも一理はありますが、大きな理由は『王神(おうしん)占星(せんせい)』です」


 『王神の占星』とはクルールの所持するスキル―魔術とは別に個体が所持する固有能力のこと―の一つだった。占星というはあまりにも高精度の未来予知能力。それは人類に知られるには余りにも危険なものだった。もし知られれば、真っ先にクルールが狙われることになる。人類と比べれば決して弱くなどないクルールだが、他の姉妹たちに比べれば戦闘能力では劣る部分がある。


「あー、それですか」

「それですよー。考えにくいですが、人類に渡ってしまった場合、間違いなく私達は敗北しますね」

「ですかー。ならわたしはお留守番ですね」

 うん、と一度頷いた。

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