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「でも不思議っすよねー。ティアマトだって思い込みと衝動だけで行動するほど馬鹿じゃないと思うっす。じゃあ、何であんなことが起きたんすかねー」
大いなる母は確実に大いなる父の計画を知ったのだ。だからこそ悩み、決断した。仔供たちに付くと。
「「何が言いたいんだ?」」
アンシャルとキシャルは吐き捨てるように言う。それはニンティが言いたいことが分かっているようだ。
「わかってて聞くんすか? ヒトが悪いっすねー。まあ、じゃあ、あーしが言うっすね。簡単なことっす、黒幕がいた」
大いなる母に大いなる父が旧人類を滅ぼそうと計画している、と誤認させる。そんなことが可能な人物がいたと言う。
魔術の祖を欺くことが出来る人物。
ならば、それは誰なのか。
「「で、誰だよ、それは」」
「えー、わかんないっすかー? 本当に? じゃあ仕方がないっすねー。教えてあげるっすよ。誰が、黒幕か」
アンシャルとキシャルはどこかで誰なのかわかっている。
それは当然だった。魔術の祖を欺くなど、ただの旧人類に出来るはずがない。旧人類でも魔術に精通した物でなければならない。あの時、勇者はまだ生まれてない。そしてアンシャルとキシャルでもない。ましてや、ラフムとラハムであるはずがない。人類王は伝えられた側だ。ならば、
「そう、エンキっすよ」
両手人差し指で頬を指して、とびっきりの笑顔で言った。




