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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
第四部 12章 魔術王は全てをかたる

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03

 大いなる父(アプスー)は遠い過去、神話の時代に旧人類の喧騒を疎ましく思い、従者たる叡智の霧(ムンム)と共に旧人類を滅ぼそうとした。その計画を大いなる母(ティアマト)がエンリルに告げたことによって、彼ら旧人類によって殺された。


 それが神話に描かれた、大いなる父(アプスー)の最期だった。


「きっとあの時誰もが疑問に思ったはずっす。本当に大いなる父(アプスー)旧人類(あーしたち)を滅ぼそうと思っていたのだろうか、って」


 彼女の言葉にアンシャルとキシャルは息を呑む。


 事実、彼らは思ったのだ。ただ喧騒が疎ましいと言う理由だけで、大いなる原初たる大いなる父(アプスー)が我らを滅ぼそうと考えるだろうか、と。普通あり得ない。


 ムンドゥス・オリギナーレには法律などない。だから誰が誰を殺めようと、残されたものと殺めた者の間での問題であって、部外者が何か言うことはなかった。だとしても、ただ喧騒が疎ましいと言う理由だけで、種そのものを滅ぼすなど誰一人考えなかったのだ。


 大いなる父(アプスー)はそのような行為に走るほど愚かではない、と言うのが旧人類の中での共通認識だ。


 彼は聡明で何事も平等に判断していた。大いなる母(ティアマト)のように愛の有無で判断などせず、必ず全ての声に耳を傾けた。そして何よりも、感情が欠落しているのではと思わせるほどに、彼が感情表に出すことはなかった。


 そんな大いなる父(アプスー)の唯一の欠点と言えば、その怠惰性だった。彼は動き始めればその力をいかんなく発揮するが、そもそも動き出すことがなかった。

 だから、そんな怠惰な大いなる父(アプスー)が自ら進んで旧人類を滅ぼすなど、誰一人考えなかったのだ。


 きっと人類王(エンリル)大いなる父(アプスー)の計画を伝えたのが旧人類の誰かだったなら、彼はその声に耳を傾けることはなかっただろう。


「怠惰な大いなる父(アプスー)が我らを滅ぼそうと自発的に行動を起こすわけがない。そう考えたはずっすよね。なのに、疑問に思いながらも誰一人それを口にできなかった。なんで? そんなの当然っすよね。大いなる母(ティアマト)の言葉だったんすから」


 そう、不幸にも伝えたのは大いなる母(ティアマト)だったのだ。

 原初からの言葉に仔共(エンリル)が応えないわけがない。

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