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テューポーンは自分の嵐の息吹が効かないことがわかると、次は両手を握り合わせて振り上げた。両腕の振り上げられた躰に力が入り、少し地面に沈む。
そして、振り下ろした。
そう、ただ一つ、為すことが可能な場合があったのだ。
適性があった場合、である。
それは何に対する適性なのか。魔術なのか、はたまた魔力なのか。
いいや、どちらでもない。
適性の有無はその役割に対してだ。
「咲和」は「魔王」への適性はなかった為にあれほどの時間を有した。しかし「サナ」にはあるのではないだろうか。
「勇者」に対する適性が。
「そんなバカな話があってたまるか!」
テューポーンの一撃を片手で受け止めた、ティアマトを中心に小さく地面が砕ける。長考の末、答えに辿り着いた彼女は激昂する。
あり得るはずがない、と。あり得ていいわけがない、と。
だって、「咲和」は私が選んだのだから。




