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安直な考えは一つある。しかし、それで道理が合わない。
少なくとも「サナ」は「咲和」が死亡してからトラウェル・モリスに来ているはずだ。でなければ、同じ世界に同じ魂が二つ存在することになる。そんなことはあり得ない。
魂とは一つの世界には同じものは存在できず、世界を行き来することはあっても複製など出来るものではない。だから叡智の霧は魂を分割して、五十の人造勇者を創ることは出来ても、魂を複製してオリジナルに近い真正勇者を創ることは出来なかった。
だから、「サナ」が「トラウェル・モリス」にやって来て、どれだけ長く見積もっても半年程度だ。一年にも満たない時間で可能であるはずがない。
同じ魂を使ったのなら、魔力の許容量は同じで、魔力が肉体に馴染むにも同じ時間がかかる。それは元が同じなのだから、変わりようがないステータスだ。
「咲和」は「ノウェム」を生みだすまでに数百年以上の時間を要した。新たな生命の創造とは、魔術に触れたことの無い者には難易度の高い技なのだ。
それを、半年程度で為せるなど、そんな、こ、と…………。
「……………適性があった?」




