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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
第四部 7章 誰が為の召喚を

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06

「だ、ダメ………まま、ま、混ざっ、ちゃう!」


 エレシュキガルは力強く言い切った。普段とは違った彼女の言葉に、「ウルティマ・トゥーレ」からずっと彼女の腕にしがみ付いていたイシュタルは目を丸くして、言葉を受けたエンリルはわかっていると言わんばかりに息を吐いた。


「「お前、混ぜる気だろ?」」

 返答はアンシャルとキシャルからあった。


「ええ、そうです。混ざればいいのです」

 そう言ったエンリルの貌には、凶悪とも悪魔的とも、はたまた神々しいとさえ言える笑みが張り付いていた。


「「彼の時を思う」」

 不意に、アンシャルとキシャルが始めた。二人の父は同時に魔術陣を描き始める。


「しかして、そこには誰も居らず」

 エンリルが続く。彼も二人の父が描く魔術陣と似た物を描き始める。


「「彼の時を思う」」

 二人の父が続ける。


「しかして、彼の者は居らず」

 エンリルも続ける。


「「彼の時を思う」」

「我らは思い続ける」


 魔術陣は完成した。三人は自身の前で完成した魔術陣を重ね合わせる。大部分は似ているが細部の異なる魔術陣が三層。


「「我らの思いは境界を越え」」

「我らの思いは時を超え」

 三人の詠唱は尚も続く。


「「「届き得ぬヒトへと、終ぞ届いた」」」

 三人の言葉が遂に重なる。


「「「ヒトは我らの思いを届き入れ、そして応える――――」」」

 詠唱と言うには余りにも懇願に近い、それの最期の一節が詠まれる。

 魔術陣に黄金の光が灯る。


「「「―――――――原初砕くその(フィーニス・オリ)刃は我らが(ギナーレ・エト・)勇者の手に(ルガルアブドゥブル)」」」

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