03
「ただ私は父さんたちに頼みたいことがあって来ただけです」
「「それはあれか? 勇者の召喚を手伝ってほしい、ってやつか?」」
二人は言葉を重ねて言う。
「「そんでもって、「大いなる母」を一緒に降してほしい、と? ヒ、ヒヒ、ヒャハハハハハハハハハッ」」
ベッドの上から動くことなく、二人の男性は腹を抱えて笑い始めた。しかしエンリルはその様子をただじっと見つめるだけだ。そんな彼の貌を見て二人の男性は嘘のように真顔になる。
「それは無理だ」
「俺達には関係ない」
口々に拒否を言葉にする。
「何故です? 父さんたちにもメリットがあるはずです」
冷静さを保ちながらエンリルは問う。
「一つ、俺達は別に「トラウェル・モリス」が嫌いじゃない」
「一つ、「大いなる母」に抵抗するほどの力がない」
人差し指を立てながら理由を口にする。その貌に表情はない。
「「最後に、勇者は死んだもういない」」
それ以上言葉はないと言わんばかりに、締め括った。
しかし、エンリルは「しかし」と二人の声に続けた。
「「ムンドゥス・オリギナーレ」のことも気になっている。そして、父様のことも気になっている。何より、叡智の霧の仇を取りたいと思っている。何故なら―――――」
最後の一言を言葉にしようとした時だ。
二人の男性はエンリルのすぐ目の前に居て、その手刀が彼の首に当てられていた。赤い滴が二筋。




