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咲和の初陣はこうして幕を閉じた。月影の道標に対する感情をうまく整理できないまま、咲和はその背中でまどろみの底へと落ちていった。
帰還した咲和は、ラフムとラハム、十一の獣によって盛大に出迎えられた。月影の道標の背中にいた咲和は、ラフムとラハムによって半ば奪い取られる形で、抱きとめられる。それに月影の道標は、やれやれ、と言った風に頬をかいた。
「ご苦労様」
クサリクが月影の道標に声を掛ける。
【いやいや、アンタの頼みだ。当然のことをやったまでだぜ。じゃあな、今後もご贔屓に】
踵を返し、空間に溶ける。
「全く……素直じゃないですね。―――――サナ様、お疲れ様でした」
クサリクも笑顔で咲和の元へと駆けよる。
【いい顔するねぇ………いやぁ、妬けちまうぜぇ】
そんなクサリクの姿を見た月影の道標は、誰に言うでもなく呟き、溶けるように消えた。




