表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
第四部 3章 正義の名の下に愚行を為す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

314/480

05

 ティアマトは独り、法国「エ・テメン・アン・キ」の跡地に来ていた。

 そこには赤いカーネーションが咲き誇り、静かに風に揺れていた。そんなカーネーションの絨毯にティアマトは躰を預けた。

そこで考える。


 あの断罪暴動は誰が首謀者であろうと許されるはずはない。

 しかし、それでも、「トラウェル・モリス(この世界)」は咲和が残した尊きのもので、「トラウェル・モリス(この世界)」に住む者たちもまた、尊き者のはずだから。

 誰であっても、その営みを砕くことは許されない。

 「トラウェル・モリス(この世界)」を救った咲和でさえ許されなかったのだ、ならば誰であっても許されるわけがない。

 世界の礎となった、大いなる原初(ティアマト)であっても。


「咲和…………人類はどこまでも愚かだ。何故地獄を為すようなことが出来るのだ……。同じ種族に対して………自らの隣人に対して………」

 手を伸ばす。

 いなくなってしまった愛しき人を思い、手を伸ばす。

 しかし、その手を取る者は居らず、どこまでも広がる至高の蒼穹のみがそこにあった。


「何故、こんな世界の為にお前が…………お前だけが居なくならなければならなかったんだ………お前のいないこんな世界に、いったいどれほどの価値がある……」


 伸ばした手を抱いて、大いなる母(ティアマト)は独り、絶望を揺蕩う。



「…………お前に会いたいよ、咲和」


 頬を伝う涙は拭われることはなく、カーネーションを静かに濡らすだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ