313/480
04
帝国西部の山岳地帯で発生した暴動に似た行為は「咲和の居た世界」でも過去何度か起こったことがあった。
それを知る者は「トラウェル・モリス」にはいない。少なくとも、知る者がいることを知る者はいない。
ティアマトはアラガキ・ミオを覚えていないし、誰一人彼女が召喚された者だと知らない。誰一人、彼女が「トラウェル・モリス」の住人でないことを知らない。何故なら、彼女がそれを言わなかったから。
だから、誰も今回の暴動を予知できなかった。
ただ一人、アラガキ・ミオを除いて。
誰も、こんなことが起きるなんて想像もしていなかったんだ。
だってココは、神話の勇者様が、皆の神話のお母さんで作った「トラウェル・モリス」なんだから。
それがたとえ、死に行く旅路であっても。
あたしが創ったものだったから。
「バシュム………犠牲者を弔うのだ…………私が出来ればいいのだろうが……………任せてもよいか?」
「………御意。帝国兵と共に丁重に弔わせていただきます」
「頼む………」




