07
ムンムと同じ願い。しかし、本質が大きく違っていることをティアマトは理解している。
ムンムは愛故に「トラウェル・モリス」の崩壊を望み、「ムンドゥス・オリギナーレ」の復活を望んだ。原初との時を取り戻そうとしたのだ。しかし、エンリルはその限りではないだろう。
何故なら、エンリル自身が原初を殺害したのだから。
「私がいる今、それが成就可能だとでも?」
「貴女の妨害があれば、我々の悲願の成就は難しいでしょう。しかし、貴女がこちら側に付けば、話が変わってくる」
「私がお前たちの側に付くと思っているのか?」
「取引をしましょう。母上、原初がティアマトよ。我々に協力してくれれば、貴女の願いを叶えて差し上げましょう」
取引と言う言葉に怪訝を表すティアマトにエンリルは続ける。
「貴女の最も望む願い。暁月咲和との再会を我々が叶えて差し上げましょう」
それはティアマトが望んで止まない願い。
暁月咲和との再会。
原初さえも諦めていたその願いが叶うと言うならば、ティアマトは大手を振ってエンリルたちに協力しただろう。
しかし、ティアマトさえ諦めた願いを、神代を生きた者であるエンリルであろうと、叶えられるはずがない。
「叶わない…………それは叶えられるはずのない願いだ」
「何を言っているのですか? 貴女が出来ないからと、我々が出来ない理由にはならないはずです。貴女が方法を間違えているだけです」
やれやれと言った風に両手を上げて頭を振る。
「何?」
「復活が叶わないのなら、暁月咲和を呼べばいいだけなのですよ。暁月咲和の魂を再度、「トラウェル・モリス」に召喚すればいい」
エンリルの発言にティアマトは目を見開く。それは彼女の頭にも過った考えの中の一つだった。しかしその考えは頭を振って振り切ったのだ。
再度の召喚は、きっと成功し咲和との再会を確実なものとするだろう。しかし、「トラウェル・モリス」に再度召喚された咲和はあの時の咲和だ。
父親に殺され、掬|わ《・》れた、あの時の咲和。それはティアマトのことを知らず、「トラウェル・モリス」のことを知らず、全てに怯えていた哀れな少女。
そんな咲和を再度召喚したところで何になる。
そんなことをしたところで、ティアマトの心は晴れず、ましてや満たされるわけもない。




