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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
プロローグ
3/479

02

 夏休みの自由研究の為に図書館を訪れていた私に声を掛けたのは、当時大学生だった彼女だった。


 彼女は私が開いている本に興味を持って声を掛けてきた。


 私が開いていたのは、「古代オリエント集」と言う本だった。数多くの神話が収録されているもので、少なくとも中学生の私が読むには難解過ぎた。それでも読み始めてしまった手前、本棚に戻しに行くのも億劫でそのまま読み続けていた。

 そうして気が付けば、目の前の席に彼女が座っていたのだ。


「それ、難しくない?」


 本を指さして彼女は言った。私はそれにびくりと肩を震わせる。


「ごめんね。驚かせるつもりはなかったんだけど」


 と、彼女は顔の前で両手を合わせた。

 謝られるなんて思わなかった私は困惑する。


「でさ、それ、難しくない?」


 合わせた手を解いて、再度本を指さした。

 小さく頷く。それに彼女も、うんうん、と頷いた。


「だよね私も読んだけど難しかったもん。と言うか、すごく読みにくかった。だって重いし」


 彼女の手元を見ると、ノートが広げられていて、その横には数冊の本が積まれている。


「君、中学生だよね? 千鳥ノ原(すぐそこ)の」


 栗色の髪を耳に掛けながら、話題が本から私に移る。


「……はい」

「やっぱりね。でもどうして制服? 夏休みだよね? あ、そっか、部活の帰りとか? 勉強熱心だね。いいことだよ、うん。私は勉強嫌いだったからなぁ。夏休みの宿題なんて最終日に追い込みかけてたしね」

「…………」


 私の沈黙をどう受け取ったのか、彼女は気にすることなく続ける。


「で、何が言いたいかって言うと、一緒に勉強しない? ―――――――あ、まって、今のなし。だって、大学生が突然中学生に声かけたとか、いくら同性でも事案だよね。ごめん! ほんと含みはないから! 純粋に一緒にやった方が互いの為だと思っただけなんだよ!」


 ココが図書館であるということも忘れているのか、彼女は声を大にして何かに抗議している。そんな彼女を司書が睨む。睨まれた彼女は一瞬で、しゅん、となって縮こまる。


「一緒、に……やっても……いいんですか?」


 思わず私はそんなことを口走ってしまった。


「君がいいなら、私は嬉しいよ。誰かと一緒に勉強って捗るしね。何より、楽しい」


 しゅんと縮こまっていた彼女は一瞬で花咲くような笑顔になる。


「楽しい?」

「そう、楽しいよ。少なくとも私はね。君は違う?」


 首を傾げて、私に問う。


「……分かりません」


 何かを楽しいと思ったことなんて私には……無い。


「そう……。なら、少なくとも、私とする勉強だけでも楽しんでもらえたら嬉しいな」

 少しだけ困ったように笑う彼女。どこか優しさのあるその笑顔に私の心はほんの少しだけ絆された。

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