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「我々のこれからを話すために来た」
「我々のこれから、と? 貴女方、獣と我々人類のこれから、と? キングゥにも話しましたが我々が手を取り合うことなどあり得ない。その申し出が原初からのものであっても」
「そのキングゥは死んだ。お前たち人類の暮らす「トラウェル・モリス」を護る為にだ。それでも人王たるお前は私の話を聞く気がないと? 我が最愛がお前らのような塵蟲の為に命を賭したと言うのにか?」
言葉こそ強いものであったが、その声色はあくまでも諭すようなものであり、表情もまた柔らかいものであった。
エンリルは咲和の訃報を聞き、目を見開いた。それはあの巨星を消し去り救世を為したのが咲和であったと言う事実から来るものだ
ティアマトの後ろに控えるムシュフシュは口を開かず、ただじっと近衛騎士を見つめている。この近衛騎士も視線に気づいて、大剣の柄に掛けていた手をそっと下した。
「この世界の現状は余りにも酷いものだ。その原因が我々「ウェールス・ムンドゥス」に住む者であることも承知している。長年に渡り獣と人類は争ってきた。それは余りにも永い戦争だ。マルドゥクが私を討ち、世界を二分した時から続くものだからな。故に、双方の感情は大きく育ち過ぎた。
しかし、我々が争い憎しみ合っているだけでは何一つ進展などしない。互いに大切な者を亡くし、力と時間、命を削るだけだ。そんなものに価値などなく、意味などない。仮に人類が私を降したとして何になる? 我が家族との戦争が激化するだけであろう」
そこでティアマトは一度言葉を止め、エンリルに視線をやった。
ティアマトを見下ろすエンリルの顔は激情に歪んでいる。
彼女の言葉はその全てが真実だった。世界を存続させ、前に進むと言うならば、争っている意味などない。しかしだ、正論と事実だけで世界が回ると言うならば、既に獣と人類は争ってなどあらず、手を取って共に歩みを進めていたことだろう。




