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「――――――ん? お主、エンキドゥか?」
家族に祝福されているティアマトは視界の端に煌めく白銀の陰に目を向けた。
そこにはボロボロになりながらも、小さく息を続けるエンキドゥの姿があった。
戦闘の終了した橋上で攻め込んできた魔獣の中で唯一の生き残りがエンキドゥだった。それ以外の魔獣は家族たちによって須らく滅ぼされている。
エンキドゥだけがその中を生き残り、魔術に依って拘束されていた。
「―――――――――――――――――――母、様?」
ポツリと零し、蒼玉の双眸を見開いた。
「やはりエンキドゥか。……その恰好を見るに、お主もムンムの側だったようだな」
ティアマトはエンキドゥの前まで行って、視線を合わせる為に腰を折った。
ティアマトが視線を合わせるとエンキドゥは大粒の涙をボロボロと流しながら、声も上げずに泣き始めた。それにティアマトは目を見開いたが、すぐに目を伏せて息を吐いた。そして、零れる涙を親指の腹で優しく拭った。




