表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
第三部 16章 転生者は救世を為し、母は―――

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

287/480

06

「「母様!」」

 ラフムとラハムは母の凶行を目の当たりして声を上げた。


「お止め下さい! 彼女はもう死んでおります!」

「お止め下さい! あんな者の為に力を使いすぎです!」


 大粒の涙を流しながら、その貌に憤怒を張り付けたティアマトには二人の娘の声は届かない。

 何度も指を鳴らし、その度にムンムを目覚めさせては殺す。

 そんな凶行を娘たちが許すはずもない。無駄に力を使い、愛しき妹(咲和)の願いを無下にする行為を、二人の姉(ラフムとラハム)が許すはずがないのだ。



 パンッ。



 と、頬を叩かれた。

 ラフムがティアマトの頬を叩いたのだ。叩かれた本人であるティアマトとラハムは唖然とする。しかしすぐにティアマトはラフムへと視線を戻し、口を開いた。


「何をす――――」

 ラフムの目を見たティアマトの言葉と動きが止まった。


「お止め下さい……。このような行為をサナは望みませんわ」

 ボロボロと涙を流しながら、不器用に笑うラフム。その手には普段は顔に巻かれている赤色の帯があった。


 初めて見る半身の表情にラハムの表情も次第に崩れていく。ボロボロと涙を流した。

 二人の娘は大粒の涙を流しながら母へと抱き着いた。それは母の凶行を止める為であり、それは愛しい妹を失った悲しみに因るもの。

 ティアマトは指を鳴らした。その音と共にムンムへと繋がっていた白銀の糸は断たれた。

 遠くからその様子を見つめていたノウェムがパタパタと駆け寄ってくる。彼女もまたその美貌を涙と鼻水でぐちゃぐちゃに崩していた。

 駆け寄ってきたノウェムと、二人の娘を原初の母は抱きしめる。


「すまなかった………。帰ろう、湖に浮かぶ城(いえ)に」





 こうして、転生者は救世を為した。

 叡智の霧の思惑は砕かれ、原初の母は帰還した。

 しかし、愛しき者を失った者の心には黒く深い影が残った。





 法国を覆ったカーネーションが、母を思う娘の気持ちを乗せて、静かに風に揺れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ