03
「え……………咲和………何故………?」
見上げていたティアマトが俯いて、崩れた。
座り込んでしまった母を二人の姉が気に掛ける。
「母様、しっかりしてください」
「母様、大丈夫ですか」
ラフムとラハム自身も自分の感情を整理できていない。しかし、ココで狼狽えてしまえば、愛しい母様をより混乱させるだけだ。それだけは避けるべきだと、二人は気丈にふるまった。
「咲和ぁ………何故、何故、お前が…………」
ボタボタと涙を流すティアマトをラフムとラハムは両側から抱きしめる。ラフムとラハムに身体を預け、ワンワンと声を上げてティアマトは泣いた。
そんな三人を無視して教皇は空を見上げ続ける。その額には青筋が浮かび、握り締められた拳からはダラダラと血を流している。
「赦さない―――――」
教皇が溢す。
「―――赦さない赦さない赦さない! あの術式にどれほどの時間と労力をかけたと思っている! 千年、千年! やり直し…………一から魔力を溜めて、それから――――」
「――――ムンム」
考えに耽るムンムの思考は闇色の感情に満ちた声で遮られた。ムンムは声のする方へと視線を向ける。
ティアマトがラフムとラハムを支えに立ち上がっていた。
「何かしら? 貴女に私を止められるとでも?」
未だ自分が有利だと疑わないムンムの声には覇気が合った。
「お前だけは赦さない………簡単に殺してもらえると思うなよ」
ティアマトはムンムへと腕を伸ばし、力強く指を鳴らした。
ベキョッ。




