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咲和が立ち上がり、巨星を見上げる。ゆっくりと降下するソレを睨んだ。
羽ばたく。魔力を伴った羽ばたきで地面を離れる。
世界を見渡せるほどの高度まで昇った。
見下ろせばそこには人々の営みがある。誰にも砕くことの許されない尊きものだ。
時に怒りに顔を染め、時に悲しみに涙を流し、時に手を取り合って笑い合うのだ。廻り、育み、営んで、そうして進んで行く世界。
それを砕くのがムンムの願いの為だと言うならば、それを救うのも暁月咲和の願いの為であろうとも、誰も咎めることが出来ないだろう。
見下ろしていた視線の先、ティアマトの隣に二人の姉の姿が見えた。
(姉さん、母さんをお願いしますね)
視線を上げて巨星を見据えた。圧倒的な巨大さと質量で前にしているだけで呼吸さえ忘れそうになる。
しかし、咲和は腕を前に突き出した。突き出した腕と巨星の間に描いたわけでもない巨大な魔術陣が出現した。




