04
「「これから頑張る貴女に私達からプレゼントがあるの」」
二人は、パチン、と指を鳴らした。すると、一本の純白の刀身を持つ長剣が二人の前に現れる。
「「元は母様が所持していた物よ。私達が使う予定だったのだけれど、私達よりも貴女が持っている方が正しいと思うわ。さぁ、手に取ってみなさい」」
言われるがまま、咲和は純白の長剣を手に取った。
「ん?」
それは首を傾げるほどに存在感のないものだった。握っているはずなのに手の中には何もないような気さえする。試しに振るってみても重量を感じさせず、よもや振るっている感覚すら薄い。
「「衝怒の絲剣。その剣の名よ」」
「…………絲?」
名前を聞いてもピンとこず、首を傾げる。
「「ええ。それは何万何億と言う絲を幾重にも紡いで作られた剣よ。故に、絲剣」」
「………燃えそうですね」
「「そんな軟な物じゃないわ。炎熱耐性に衝撃耐性、その他様々な耐性を持つ宝剣よ。なんせ、私達の母様の物だから」」
「そっか……そうですよね。母さんの物だもんね」
欲しかった玩具をもらった子供の様にはしゃぐ。それを表現するように、衝怒の絲剣を円舞でも舞うかのように振るった。
「「喜んでくれて何よりだわ。―――――では、開錠するわよ」」
二人はそれぞれ片腕を前に出し、パチン、と指を鳴らした。すると、目の前の明らかに人間用ではない巨大な扉は、大きな音を立てながら開いていく。
「「さぁ、サナ。私達の愛しい妹よ。塵蟲どもにわからせてあげなさい。お前たちが侵さんと欲すは、大いなる母の領域であると」」
「はい! 姉さん!」
扉は開かれ、咲和は湖に浮かぶ城を飛び出した。




