05
顔を上げると、ファウストが真っ直ぐに咲和のことを見つめている。その視線には望んでいる答えがあるだろうと、咲和は感じた。
しかし、その望まれている答えを咲和が口にすることはない。
「誰にも、望まれなかった……救世など誰も望まなかった。家族が望んだのは復讐だけ……。そう、誰も望まなかったんです」
「じゃあ何故お前は為そうとする」
「家族に生きてほしいから。これは誰にも望まれなかった願い。誰も望むはずのなかった願いです。だってそんなことを望んだって、母さんの為の復讐を為すことは出来ないから……。だから、これは私の自己満足のエゴに過ぎません! 誰も望まず、誰も願わなかった、私だけの願い…………私の、暁月咲和として唯一の願いです!」
「そうか……自己満足のエゴと、自身の唯一の願いと言い切るか……」
咲和の精一杯の叫びをファウストは噛みしめるように飲み込んだ。
そして真っ直ぐに咲和を見つめ返す。
「いいだろう。ならば、あたしもその願いに応えてやる…………」
ファウストは静かに目を伏せた。




