07
「――――――――――――ッ!」
機械仕掛けの帝剣とエンキドゥのグラディウスとがぶつかる激しい剣戟が響いた。
しかし、既にエンキドゥはイシュから距離を取っており、両腕は下げられている。その手に握ったグラディウスには傷の一つもない。
一方で機械仕掛けの帝剣はその刀身に大きな亀裂を走らせていた。砕ける一歩手間の状態だ。あと何度か鍔迫り合いになれば粉々に砕けてしまうだろう。
あの一瞬、エンキドゥの両手が煌いて放たれたのは紛れもなく、鋭く真っ直ぐに伸びる一突きだった。ただ、その一突きは余りにも鋭く速かった。それこそ両手が煌いて見えるほどに。
あと一秒でも遅ければ確実にイシュは上半身が消し飛んでいただろう。機械仕掛けの帝剣に亀裂が入るほどの衝撃など人体が受ければ消し飛んで当然なのだから。
何故なら、機械仕掛けの帝剣はその身を削る事こそあれど、刀身に亀裂が入る事などあり得ないのだから。事実、機械仕掛けの帝剣は鋳造されてからこれまで一度も刀身に致命的な傷を負うことはなかった。帝国陥落時の咲和との激しい戦闘ですら傷つくことはなかった。
「貴様………これまでは嘗めていたのか……」
膝をつきエンキドゥを睨む。
「嘗めていた覚えなどない。ただ、加減が出来なくなっただけだ」
「加減、だと? それを嘗めていると言うのだ、馬鹿者………」
機械仕掛けの帝剣を杖代わりに立ち上がる。
(先の一撃が奴の本来の速度なのだろう………まったく、このような奴がいるなど誰も言わなかったではないか………)
小さく息を吐いた。
辺りの状況は最悪。自身も先の一撃で躰に疲弊が見える。得物は全壊一歩手前。
(これは余の思っている以上に不味い状況になっておるな――――)




