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魔術訓練を行いつつ、同時に戦闘訓練も始めていた。
これも二人の姉の提案によるものだ。「「指揮者なら誰よりも強くならないとね」」とは、二人の弁である。正直咲和には理解できない理論だったが、愛しいと言ってくれた姉たちが言うのだから、と彼女は反論せずに始めていた。
しかし、戦闘訓練は魔術訓練の合間と言う、極短い時間のみで行われた。訓練に付き合っていたのはムシュマッヘがほとんどだったが、時たま別の者も混ざっていた。
そんな中、咲和が一番の恐怖を感じたのはラハブとの戦闘訓練だった。ぬるりと光る触手による嫌悪感と、ラハブの戦闘時のぎらついた眼光が恐怖を煽ったのだ。その上、他の者が加減をする中で、彼女だけは加減なしの本気で戦っていた。戦闘経験皆無の咲和からすれば、恐怖以外の何物でもない。
しかし、そんな傍若無人であるラハブに対して、咲和の好感度は下がることはなかった。むしろ、好感度は上がっていた。自分に対して悪意のないタメ口は新鮮で嬉しいものだった。だから、ラハブに対しての彼女の口調も次第に砕けたものになっていった。
「……ラハブちゃんとはもうやりたくありません」
「えぇー、なんでさー。酷いよぉ」
「……ダメです。絶対にやりません」
「サナが拗ねたー」
その様子をラフムとラハムは微笑ましく見ていた。
「「貴女が悪いのよ、ラハブ」」
「姉さん……帰りましょう」
二人まで寄って来ていた咲和が二人の手を取って言う。そこには姉を慕う妹のような感情が乗せられている。
「「ええ、そうね。お疲れ様」」
その表情はまるで、妹の成長を尊ぶ姉のようだ。
「ちょ、僕は置いてきぼりなのぉー!」
とラハブは修練場を出ていこうとする三人の背中に向かって走った。
二人の姉と小さな妹と共に咲和は修練場を後にした。
こうしてまた、咲和は指揮者へと近づく。
その感情は、友愛であり、家族愛であり、姉妹愛であり―――呪いの様だった。




