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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
第三部 8章 「偽・十一の獣」―5

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03

【さぁて、次は俺の番だぜ】


 言うや否や、ルーナは地面を蹴った。

 アポスタタエはマレフィキの前に出て引き金を引いた。その後ろで新たに魔術陣が描かれる。


「星の海。何もない星の海を揺蕩う。それこそが我が望み、我が母の願い。故に十二の(しるし)は天を見上げ、叡智を慕う――――」


 アポスタタの後ろで魔術陣が輝きます。


「―――十二の徴は(セルウス・シデラドゥ)獣の破滅を示す(オデキム・アプスー)


 魔術陣の輝きは最高潮へと達し、形を変えていく。

 ルーナは放たれる弾丸を避けながらマレフィキの目の前まで辿り着き、回し蹴りを放った。


【まずはひとr―――――――】


 空切る蹴りはマレフィキの頭部を破裂させる。そのはずだった。

 攻撃を仕掛けたはずのルーナはクサリクの真横を通り過ぎ、後ろにあった民家に突っ込んだ。


魔生物(マギリア)生成術ですか……また面倒な」


 やれやれと頭を振ったクサリク。

 その言葉通り、マレフィキの横には全身から青色の光を放つ人型があった。

 光は徐々に治まり人型の全容が見えてきた。

 それは幼い少年のような姿だ。描かれた魔術陣を纏っている姿はどこか儚げだ。

 魔術陣を直接の媒介として作り出された魔生物(マギリア)


 魔生物(マギリア)妬災の(インウィディウム・)蛇焔(セルペンス・フランマ)で生み出される炎で出来た蛇竜とは違い、明確な知性と感情を備えている。それ故に扱いにくく、それ故に術者本人への負荷が大きい。

 しかし、そのデメリットを踏まえても尚余りあるメリットが存在する。

 寿命こそ通常の生物とは比べるまでもないほどに短いが、それでも一年は生きることが出来る。その間に学んだ事は忘れることなく、その全てを完全にマスターする。

 生まれて間もない赤子のように何でも吸収するが、その身体能力は赤子のそれではないのだ。

 つまり、学習能力が桁外れの知性ある怪物ということになる。


 それこそが、クサリクが面倒だと言った本質だった。

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