03
【さぁて、次は俺の番だぜ】
言うや否や、ルーナは地面を蹴った。
アポスタタエはマレフィキの前に出て引き金を引いた。その後ろで新たに魔術陣が描かれる。
「星の海。何もない星の海を揺蕩う。それこそが我が望み、我が母の願い。故に十二の徴は天を見上げ、叡智を慕う――――」
アポスタタの後ろで魔術陣が輝きます。
「―――十二の徴は獣の破滅を示す」
魔術陣の輝きは最高潮へと達し、形を変えていく。
ルーナは放たれる弾丸を避けながらマレフィキの目の前まで辿り着き、回し蹴りを放った。
【まずはひとr―――――――】
空切る蹴りはマレフィキの頭部を破裂させる。そのはずだった。
攻撃を仕掛けたはずのルーナはクサリクの真横を通り過ぎ、後ろにあった民家に突っ込んだ。
「魔生物生成術ですか……また面倒な」
やれやれと頭を振ったクサリク。
その言葉通り、マレフィキの横には全身から青色の光を放つ人型があった。
光は徐々に治まり人型の全容が見えてきた。
それは幼い少年のような姿だ。描かれた魔術陣を纏っている姿はどこか儚げだ。
魔術陣を直接の媒介として作り出された魔生物。
魔生物は妬災の蛇焔で生み出される炎で出来た蛇竜とは違い、明確な知性と感情を備えている。それ故に扱いにくく、それ故に術者本人への負荷が大きい。
しかし、そのデメリットを踏まえても尚余りあるメリットが存在する。
寿命こそ通常の生物とは比べるまでもないほどに短いが、それでも一年は生きることが出来る。その間に学んだ事は忘れることなく、その全てを完全にマスターする。
生まれて間もない赤子のように何でも吸収するが、その身体能力は赤子のそれではないのだ。
つまり、学習能力が桁外れの知性ある怪物ということになる。
それこそが、クサリクが面倒だと言った本質だった。




