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「天骸の座、彼方の崩天、深界の居城、極光の平伏、万象の境界。ただ崩れ去り、何一つ残ることはない―――」
ムシュマッヘが唱える。
天ではウシュムガルが弓を射るような体勢。その手には炎を纏った弓と先端が螺旋状の黒鉄の矢。
「――――これこの一撃を以て、灰燼に帰す。生きること能わず、刹那の死に感涙し咽び泣くがいい―――」
音を立てて軋む弓。張り詰めた弦がいつ切れてもおかしくない。
そして、矢は射られた。
空気の壁を破壊し、光さえも捉えて矢は進む。
矢の通った場所の魔術陣の壁が音を立てて崩れていく。しかしその破片は地上に落ちることなく、矢へと曳き付けられる。
真砕く虚妄の獣と二人の獣は動けないでいる。それはただ純粋な恐怖に因るものだ。
叫びを上げることさえなく、狂うことさえ許されず、ただ見上げ、死を受け入れることしかできないほどの恐怖。
心臓の鼓動は止まっていない。思考も明瞭。人格も崩壊していない。肉体的な死も人格的な死も訪れてはない。
しかしそれでも、彼らは既に死んでいた。




