03
プセドテイとメンダキオルムは二人で一つの魔術陣を描く。それは巨大かつ複雑な物。少なくともムシュマッヘとウシュムガルはその魔術陣を目にしたことはなかった。
しかし、そんなもの二人にとってはどうでもよかった。
ムシュマッヘは既に戦闘は終わった物として肩の力を抜いているし、ウシュムガルは目の前の獣への殺意だけが頭の中に渦巻いていて、それ以外の何も気にしていなかった。
「「これは世界砕く戦いである。これは世界取り戻す戦いである。これは世界復活の戦いである。故に、敗北などあり得ず、敗走など許されない―――」」
ウシュムガルから膨大な量の魔力が溢れ出る。それだけで人間ならば融けてしまいそうな熱量を放つ。腕や尾の鱗は逆立ち、爪は鋭利さを増す。
「「――――ならばココに誓う。この戦いの勝利と、我らが母の栄光を!―――」」
ウシュムガルの身体がミシミシと音を立てる。
「「―――真砕く虚妄の獣!」」
魔術陣は完成し、詠唱は完了した。
「ほぉお……」
ムシュマッヘが思わず溢した。
プセドテイとメンダキオルムの腕は斬り落とされたかのように肩から無くなっていた。そこからは滝のように血液が流れだす。
魔術陣の前に一体の異形が姿を現した。
全ての獣の集合体。
あり得てはいけない造形。
生命の冒涜。
それは、大いなる母への侮辱に他ならない。
人間と竜と虫の三対の腕、鳥とコウモリの二対の翼、甲殻と鱗と皮膚と毛皮が乱雑に全身を覆っており、脚は人間と獅子と馬の三対。尾は魚、その頭は人間をベースに口は蟲の様に上下左右に割け、様々な生き物の目が成す複眼を持ち、耳は無く、12本の角が生えていた。
醜悪を体現した獣がそこにいた。




