01
「「貴様らは、我々がココで屠る」」
ムシュマッヘとウシュムガルの前に現れた、二人の青年は力強い言葉と共に駆けた。
「ウシュムガル、少し離れていろ」
「はい、お姉さま」
ウシュムガルはムシュマッヘから数歩だけ距離を置いた。
プセドテイと名乗った獣は両刃剣を二刀握って、二人に迫る。
メンダキオルムと名乗った獣は即座に魔術陣を描き詠唱に入る。
「焼く妬く厄。この災厄を以て、我が怨敵を焼き滅ぼす―――妬災の蛇焔!」
魔術陣は完成し、詠唱は完了した。指は鳴らされ、魔術陣からは炎の躰を持つ蛇竜が飛び出した。
蛇竜は真っ直ぐに、ムシュマッヘとウシュムガルへと向かう。それは空気焦がす熱を放つ。常人では近づかれただけで焼死するだろう―――
プセドテイは二人の直前で真上に跳ねた。もちろん、それは単なる回避行動ではない。天高く跳んだ彼は、空中で身体を回転させて、その遠心力を乗せたまま二人に落下した。通常の生物であればまず耐えることの出来ないほどの高度から一撃―――
「はぁあ」
大きな溜息が零れた。
――――しかし、彼女たちは常人でもなければ、通常の生物でもない。
「なッ!」
「にィ!」
プセドテイとメンダキオルムは目を見開く。
当然だ。放たれた蛇竜は尾を薙いだだけで消し去られ、生物であれば耐えることの出来ない一撃は片腕で受け止められた。
プセドテイは大きくは跳ねて、二人から距離を取った。
「これだけか……。たったこれっぽっちの力で「偽・十一の獣」などと名乗ったのか………。はぁあ、ワタシたちも嘗められたものだ」
再度大きな溜息を吐く。
「お姉さま、大丈夫ですか? お怪我はございませんか?」
離れていたウシュムガルがムシュマッヘへと駆け寄り、両刃剣を受け止めた腕を擦った。
「問題ない。あのような塵蟲ごときではワタシに傷を負わすことなどできん」
「――――ッ!」
ウシュムガルを抱き寄せて、口づけでもするのかと思うほど顔を近づけて、ムシュマッヘは言った。それに抱き寄せられた彼女は耳まで真っ赤にした。しかし、すぐに頭を振ってムシュマッヘから名残惜しそうに距離を取った。




