2/479
01
私はココで終わる――――――
決して長くない人生の幕は下りようとしていた。
暁月咲和の人生は痛みと怒号と嘲笑で満ちていた。ありとあらゆる悪意を混ぜ合わせてできた苦痛の日々だった。
今まで生きてこられたことが奇跡だった。両腕は頭を庇う為にできた痣で埋め尽くされているし、背中には殴打の痕と消えることない大きな切り傷がある。家にいれば父親に殴られ、父親がいなければ母親に殴られた。
玩具のように扱われ、壊れることが約束された生だった。十五年間と言う、引き伸ばされた苦痛の日々の中で咲和は死んでいった。
生きている実感を抱いたことなどない。
生きていたいと思ったことなどない。
恐怖を抱かなかったことなどない。
死のうと思ったことなど数えきれない。
しかし死ねなかった。
(私に幸せだったことなんて――――――無かったらよかったのに)