05
宣戦布告から一週間。
「サナ様、いらっしゃいますか?」
自室にて魔術書を広げていると、バシュムの声がドア越しに聞こえた。
「はい、どうぞ」
「失礼いたします」
バシュムが入ってきて、小さく礼をする。
魔術書を閉じて咲和も立ち上がる。その前にバシュムが傅いた。
「貴女がココに来たと言うことは………」
「………はい。湖の対岸にて敵影を確認いたしました」
顔を上げることなく、バシュムは言葉を紡ぐ。
「その数、無数。そして―――――――――――――――――人間ではありません」
「え?」
思わず零れた。
「敵影はその全てが、獣のそれでした。中には二足で立つ者もありました」
「二足………ヒト型…………」
「その通りでございます。ヒト型や、その他にも翼を持つ者、水を泳ぐ者など多種多様。しかして、一様に人類種ではありません」
バシュムはやはり顔を上げることない。そして咲和も言葉を紡げないでいた。
「現状、クサリク姉さんが魔術を以て侵攻を阻んでおります」
「そう、ですか………では、皆に入口に集合するように伝えてください」
「かしこまりました。サナ様」
「なんですか?」
「無理だけは、なさらないでください」
その言葉を最後に、バシュムは部屋を後にした。
「…………まったく、敵いませんね」
そう零した咲和はその場に崩れ落ちた。




