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この後、咲和と共に法国へ赴く者、湖に浮かぶ城に残って護る者がそれぞれ咲和の口から告げられた。
ムシュマッヘ、ウシュムガル、ラハブ、クサリク、バシュム。
以上が法国へと赴く者。
ラハムとラフム、ウガルルム、ウリディンム、ウム・ダブルチュ、ギルタブリル、ムシュフシュ、クルール、そして人間たち。
以上が湖に浮かぶ城を護る者。
咲和の考えた限りの最善。
家族たちの相性、戦闘スタイルなどを加味した結果だ。
その采配に誰一人口を挟む者をはいなかった。
「続いて我々が動きだすタイミングですが―――教皇の言葉から察するに、彼女らは「フィクティ・ムンドゥス」へと攻め込んでくるでしょう。なので、我々が動くのもそれに合わせて行うのがいいと考えます。クサリクさん、バシュムさん。これより当面の間「フィクティ・ムンドゥス」全域の監視をお願いできますか? 方法はお任せします。教皇からの斥候の一人でも「フィクティ・ムンドゥス」に足を踏み入れ次第、我々も法国へと強襲を掛けます。
なので、今この時より皆にはいついかなる時でも臨戦態勢でいていただきます。大変なことだとは思いますが、よろしくお願いします。私も一緒に、頑張ります、から………」
言葉を紡いでいくほどに咲和の表情に影が差していく。
その変化に誰もが気が付いていて、でも誰もそれを指摘することが出来ないでいた。誰もが、咲和が家族を誰よりも愛していることを知っていたからだ。そんな愛しい家族に臨戦態勢の強要を願うなど、彼女にとって苦痛以外の何物でもないことを理解していたから。
「では、これで…………伝えておくことは以上です。クサリクさん、バシュムさんのお二人は監視をお願いします。皆も、いつでも戦えるようにお願いしますね」
その言葉を最後に、咲和は玉座の間を後にした。
家族たちには小さな咲和の背中がより小さく映った。




