06
「私にはムシュマッヘ姉さまのような気高さも麗しさも、ウシュムガル姉さまのような輝きも恥じらいも、ウガルルム姉さまのような包容力も寛容性も、ウリ姉さまのような愛らしさも純朴さも、ウム姉さまのような愛らしさも愛玩性も、ラハブ姉さまのような凶暴性も裏表のなさも、ギルタブリル姉さまのような素直さも自信も、クサリク姉さまのような寛大さも艶かしさも、バシュムのような従順さも隠密性も、クルールのような未来視も探求性も、何も持ち合わせておりません。しかし、何も持たない私が唯一他の皆と違う部分があったのです。
それが、裏切りの期間があった、と言う点です。私には一度サナ様に刃を向けたという罪があります。それは他の誰も持たない私の唯一性です。そんな背徳にも似た、罪の意識が私にはある。それこそが、私が今、この場で貴女を押し倒している原因ともいえる理由なのです」
ムシュフシュの咲和を見下ろす眼差しに熱と粘着性が籠る。腕を掴まれている咲和は身を捩ることで視線から逃れようとする。しかしそんな様子を見て視線にはさらに熱がこもっていく。そしてズルリと舌なめずりを。
「私の中にあったリミッターは、「勇者」との契約で完全に破壊されました。これでは言い訳に言い訳を重ねているだけにしか聞こえないでしょう。事実そうなのですから私には返す言葉もございません。ただ、私のリミッターは「勇者」によって破壊され、貴女と二人きりの空間になってしまえば、こうして貴女を襲うことすら躊躇えないのです」
「………………」
不理解と軽蔑さえ含む眼差しをムシュフシュへ向ける。しかしそれさえも彼女にとっては、愛おしく映ってしまう。
「ああぁん。その眼差しすらそそるのです。それだけでタッシテしまいそう」
掴まれていた咲和の腕は解放され、ムシュフシュは自らの躰を抱く。
「………………満足されましたか?」
解放された咲和は身を抱くムシュフシュの下から這い出て、ベッドの上でちょこんと正座をする。そしてにこやかに笑んだ。そこには先ほどまでの軽蔑はすでにない。
「満足? 出来るはずもありません…………だから、一つだけ、ただ一つだけでいいのです。私とお約束していただけないでしょうか?」
自らへの抱擁は解かれ、ベッドを降りる。
そして、床に伏し、首を垂れた。
「私は卑しい、自らを律することさえ出来ない愚かな獣です。ですから、どうか、御身一つでこの部屋を訪れることをなさらないでください。次、このような機会があれば、私は本当に――――」
九女の言葉は途切れ、その目を見開く。
床に付けられたはずの頭は上げられ、その身を咲和に抱きしめられている。
「サ、ナ様? おやめください、私は今―――」
「貴女が苦しんでいることは理解しました。貴女との約束を守りしましょう。ですが、こうして苦しんでいる家族を放っておくことが出来るほど、私は出来た王ではありません。どうか、今回だけは許してください」
「あ、ああぁ…………なんて、なんて…………」
その小さな体に手を回すこともできず、ムシュフシュは静かに滴を溢した。




