03
「咲和です。いらっしゃいますか?」
「どうぞ、開いていますよ」
続いて訪れたのはシュガル・アッガシェル――「ナンナイ・クルウ帝国」が皇帝の盲目の姉――の部屋だった。
「失礼します」
「相変わらず腰が低いですね。もう少し堂々としてみてはいかがですか?」
咲和が入ってくるのを見ると、シュガルはベッドから動かずに、その視線を開いている本に落したまま軽口を言う。
「外では堂々としてますからいいんですよ」
「そうですか―――――して、本日はどういったご用件で? 無用に私の部屋に来たわけではありませんよね?」
言外に用件がないなら帰れと言っている。しかし今回ばかりは咲和にはきちんとした用件があった。
「先の宣戦布告について相談がありまして」
「悪い事は言いません、私には向かない案件です」
やはり視線を動かすことなくシュガルは言う。
「いえ、貴女の慧眼は必要です」
「盲目の私に慧眼とは、皮肉ですか?」
「あ………。すみません、悪気はなかったんです………」
見ている側が気の毒になるほど、あからさまに気を落とす咲和。そんな様子にシュガルはようやく彼女に視線を動かして、盛大に溜息を吐いた。
「冗談です。まったく、王を名乗るのなら従者の軽口くらい聞き流しなさい」
「すみません……」
「で、相談でしたね? 私の浅知恵で良ければお貸しします。我らが王よ、何なりと」
ベッドの上で首を垂れるシュガル。それに、咲和小さく笑んでベッドに腰を下ろした。
「これなんですが」
と、自室で書いたメモを手渡した。
シュガルはメモを受け取ると、閉じられた目を薄く開いて顎に手を当てた。




