02
初めに咲和が訪れたのはラフムとラハムの部屋だった。
咲和が部屋を訪れると、二人の姉はにこやかに招き入れてベッドへと促した。
「「どうしたの?」」
「姉さんに聞きたことがありまして。これなんですが――――」
先ほど部屋で書き起こした十一の獣たちの能力についてのメモを二人の姉に渡す。
二人の姉はソレを見て少しだけ考えるそぶりを見せた。そして小さく息を吐いて口を開く。
「「あの子たちのことは書いてあるけれど、私達のことが書いてないわね。また、私達はお留守番かしら?」」
「…………はい。姉さんには十一の獣の帰る家を護ってもらいます……」
「「そう。貴女がそう言うのなら、私達はそれに従うわ。貴女がこの湖に浮かぶ城の主であり、「|フィクティ・ムンドゥス《この世界》」の王なのだから」」
二人の姉は挟む様に咲和を抱きしめる。
「「大丈夫、貴女ならきっと為せるわ。私達の愛しい妹で、母様の唯一の子なのだから」」
二人の姉に抱きしめられながら、咲和は遠き過去に思いを馳せる。それは訪れることのない幻想。消えることのない可能性だった。
しかし、咲和にはそんなものは既に必要なかった。
何故なら、彼女に必要なものは愛しき家族たちだけだったのだから。




