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「あ、違うか。正確には別の世界の咲和なんだよね?」
訂正されようとも咲和には理解できなかった。言葉の意味は理解できている。しかし、何故それを彼女が知っているのかを理解できなかったのだ。咲和の知る限り彼女に魔術やそれに付随する第六感の素養はなかったはずだ。
「なん、で?」
「…………あ、そうだよね。えーっと、何で知っているかってことだよね? ファウストさんに教えてもらったからなんだ。あの人は本物の魔女だから、こう言ったことに強いんだってさ」
何故か照れ臭そうに下を向いて頬を掻く彼女。その横顔を見て咲和は何も言えなくなる。この人は間違いなく自分の知る彼女で、この世界を生きる別人だ。
「そうだったんですね………」
「うん――――――そうだ、何か聞きたいこととかある? ワタシの知ってることで良ければ答えるよ?」
「じゃ、じゃあ―――――」
咲和はコチラでの自分のことを聞いた。
コチラの自分がどういった人物で、今は何をやって生活しているのか。そんな自分のあるはずだった未来を聞いてみたかった。
曰く、咲和はミオと同様に作家を生業としているらしい。ミオと出会ったのもデビュー作が同じ出版社からだったからだそうだ。
そして、今は彼女と同棲している。
同棲を始めて既に十年近いと言う。
コチラ側の咲和も卒業式のあの日に父親に酒瓶で殴られてことによって生死を彷徨った。しかし奇跡的に一命をとりとめた。その事件をきっかけに両親は逮捕、実刑判決を受けた。現在は刑期を終えてどこかでのうのうと生きているらしい。
事件の後、咲和は一時的に施設へと入ることになった。そんな彼女を引き取ったのが彼女だった。
咲和は事件のこともあり高校へは進学せず、彼女の家で一日を過ごした。初めは寝ていることが多かった咲和も次第に家事を手伝い、買い物を請け負ったりするようになった。
そして、とある小説を読んだことをきっかけに執筆するようになった。




