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溶ける。融ける。解ける。熔ける。鎔ける。
暁月咲和の意識が深い深い闇の中に溶けていく。
息もできず、音もなく、光もない。そんな闇の中へ溶けていく。
境界は曖昧になり、暁月咲和と言う存在は溶けて消えていく。
家族との日々が溶けていく意識の中を駆けめぐる。
(このまま、私は……)
楽しさと嬉しさと愛おしさとほんの少しの痛みの記憶。そんな尊き日々が過ぎていく。
(あー。本当に―――――――)
ついに咲和の意識が完全に闇と同化する。そんな時だった。
残滓としか言いようがないほどの小さな小さな意識の欠片は、掬い上げられた。




