01
湖に浮かぶ城に戻ってきたイシュはいの一番に咲和の部屋へと駆けこんだ。
部屋にはすでにラフムとラハムがいて、咲和はベッドに寝かされていた。
イシュもベッドへと駆け寄り、彼女の頬に手を触れる。規則正しく上下する胸を見てひとまず安堵した。
「…………サナは?」
「「負荷を掛け過ぎたのよ。神代の魔術に対抗する為に、模倣とはいえ母様の魔術を行使したのだもの。意識がもたなかったのね…………」」
そこで二人は口を噤んだ。
「で、サナはいつ頃目覚める?」
「「………………」」
二人は尚も口を噤む。繋ぐその手には力が入っている。そしてイシュから顔を背けた。
「どうなんだ? 目覚めはいつになる? なんだ、お主たちにもわからぬのか? ならばクサリクに――――」
「「やめなさい」」
イシュの言葉を遮る。声色には明らかな諦めが含まれている。
「―――――じゃあ、なんだ? このまま、サナは目覚めないとでもいうのか! 余は認めぬぞ! サナが目覚めぬなど、そのようなこと………」
遂にイシュもその口を噤む。拳を握り締め俯く。
彼女の中で咲和と過ごした数ヵ月が流れていく。決して長くない期間だったが、それでも彼女にとってはかけがえのない時間だった。それこそ、愛しき人だと思わせるに足る時間だった。
「余は………あたしは……どうすればよいのだ………」
滴は溢れ、頬を伝う。




