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(質素? コレが?)
今一度自分の服装を確認した。
生前では着たことなどなかった、シンプルな黒いワンピースに身を包んでいる。咲和自身こんなものを着ることになるなんて夢にも思わなかった。しかし、今はそれを着ているし、それを質素と言われてしまった。確かに、他の者の着ているドレスに比べれば、質素に当たるのかもしれない。
ムシュマッヘの着ていた漆黒のドレスもシンプルではあるが、それの糸は光沢があり艶やかだった。きっと最上級の物が使われているのだろう。ウシュムガルの着るゴシックドレスはドールの着るような華やかさがあったし、ウガルルムの着るバーテン服も一見して奉仕服としては一級品だった。他の者が着ている物も、少なくとも咲和の着るワンピースよりは、華やかで一級品揃いだ。
思案を終わらせて、巨大なクローゼットの前に立つ。今までの自分には無縁の代物だ。
「………すごい」
思わず独り言ちた。クローゼットの中は過剰なほどに衣装が詰め込まれていた。その上、どれもが咲和のサイズにピッタリな物だ。
何着かを見繕い、クローゼットの横にあった姿見の前で体にあてがってみた。しかし、どれもが華やか過ぎて、自分には合っていないような気がした。
(学校の制服みたいなものがあれば……)
と探してみるも、そんなものはあるはずもない。
結局、元着ていたワンピースに似た、黒のワンピースドレスにすることにした。腰に大きな黒いリボンが付いているが、こればかりは仕方がなかった。先のワンピースで質素と言われてしまったのだから、リボンを外して着替え直しと言われるのはあまりにも馬鹿らしい。




