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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
第二部 6章 黒いシミ

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06

「此度、この戦場において勝利は不要。凱旋など不要。凱歌など不要。栄光など不要。ならば、この身、この命など捨てても構わぬ! 我が母、叡智の霧の名の下に、我が身体を捧ぐ――――我が身体は(サクリフィコ・)仇敵穿つ(トートゥム・)劫火とならん(ムンドゥス)!」

 魔術陣は描かれ、詠唱は完了し、魔術は完成する。

 彼の身体を炎が包み込んだ。それは鮮やかな青色の炎だ

 青色の炎は次第にその形を変えていき、最後には一羽の巨大な鷲へと変化した。

 炎の鷲は一度、円を描くように空を舞うと、そのままサナへ向けて放たれた矢のように真っ直ぐ飛んだ。

 サナは炎の鷲を一瞥し、刹那の内に魔術陣を描いた。


「底深き混沌の器、敬虔なる獣の信徒。否定、拒絶、反発、削り、崩壊を齎す。壁を成す蛇の群れ。その瞳は映した全てを凍らせる――――魔眼の獣は(プッピラ・)王護る盾(ベースティアエ・)とならん(スクゥートゥム)

 詠唱は完了し、サナと炎の鷲との間に黒白の渦巻いた膜が現れる。

 炎の鷲はそんな膜を気にすることなくサナへと突き進む。

 そして遂に膜に激突した。すると、膜は貫かれることはなく、炎の鷲は完全にその侵攻を止めた。

 炎の鷲は啼く。

 全てを貫かんと燃え上がる。

 自らの全てを賭して燃え上がる。

「逝け」

 意味のないものだと吐き捨てるように、サナは侮蔑を言葉にする。

 小さく指は鳴らされた。

 パチン、と言う小さな音と共に一陣の風が過ぎ去る。

 そこには既に孤高の炎鷲(えんしゅう)はあらず、透き通るような青空が広がるのみだった。

 眼下で二匹の蛇竜が静かにその姿を消した。


「…………………死なせぬ、私が絶対に」

 その言葉を最後に蒼黒の光は咲和の身体を離れて霧散した。

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