03
「ごめんなさい? 悪い? お前? 悪い?」
無垢なる獣は首を傾げ、ケタケタと笑う。何故咲和が謝っているのかも知らぬまま、ケタケタと笑い続ける。
「じゃ、じゃぁあ、死んでもいい? 悪いのは、殺してもいい? そうだったっけけけけ?」
二つに割かれた右腕をそのままに、一歩前に出た。
咲和は蹲ったまま動かない。
「アハハハハハハハハハハ。お母さんが、お母さんが、喜ぶ? 喜んでくれるるるる?」
笑いながら、血を流しながら、彼女を見下ろし右腕を振り上げる。
「褒められれられる? 褒められるるるるるるるるる?」
叫びながら右腕は振り降りされた。
「なんで私が………なんで? ねぇ、なんで?」
咲和は振り下ろされた右腕を絲剣で受け止めていた。
彼女の言葉が理解できず彼は首を傾げる。
「私は悪くない………私は何もしてないのに…………なんで?」
衝怒の絲剣で受け止めていた右腕を弾いて、そのまま右腕を斬り飛ばした。
「イタイイタイイタイイタイイタイイタイ」
ケタケタケタケタと彼は笑う。掴み掛ろうと左腕を伸ばした。
「ねぇ……なんで?」
伸ばされた左腕も咲和によって斬り落とされる。
「イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ」
叫びながら彼は大きく後ろに跳んだ。その顔に笑みはない。
彼は痛みが楽しみに繋がっていないことを理解し始めた。
「イタイ、イヤァァァァァァァァアアアアアアアアッ」
彼の両腕の断面に魔術陣が現れる。魔術陣によって止血され、耳覆いたくなるほどの異音と共に両腕は再生した。
グルグルと回っていた目の焦点が定まっていく。




