05
惨たらしく無意味に終わった人生が、新たなる世界で再スタートした。それは酷く滑稽で、理解しがたくて、馬鹿らしい。しかし、それでも、咲和はその人生を謳歌しようと思い始めていた。それは母さんの言葉に由るもので、ラフムとラハムの言葉に由るものだ。
自分を愛しいと言ってくれた、受け入れてくれると言ってくれた。生前、そんなことを言ってくれたのは、ただ一人しかいなかった。そして、咲和はその人の傍にいることができなかった。だから、今度こそはそう言ってくれた人たちの傍に居たいと思った。
仮にその言葉が偽りだったとしても、咲和には関係がなかった。
(だって、その言葉だけで私は―――――――――――――幸せだったから)
影たちの中央を通って玉座に辿り着く。そうしてやっと、影たちの顔を見ることができた。
一人は、先ほどのホールにいたムシュマッヘだった。他の九人もすべて女性だ。
「我らが王。ココに十一の獣、御身の前に」
ムシュマッヘが傅く。すると、他九名も一斉に傅いた。
(王って………私のこと、なんだよね? ………そもそも、この人たち)
彼女たちを俯瞰する。
ある者は背中から巨大な翼が生え、ある者は背中から太い触手が生え、ある者は両腕が獣の前肢のようになっていて、ある者は蠍の尾が生え、ある者は青白い大きな角が側頭から生えている。
つまり、彼女たちは人間ではなく、文字通りの「獣」だった。
「………私は暁月、咲和です」
俯きがちに自分の名前を口にする。
「「これから、我々の王となる者よ。我らがキングゥだと思いなさい」」
遅れて、ラフムとラハムが咲和を挟む様に玉座の脇に立つ。
「「サナは目覚めて浅い。各々、名乗りを上げなさい」」
その言葉に十名が顔を上げる。そして、傅いたまま名乗りを上げた。




