06
と、そんなやり取りが十回に及ぼうとした時だった。
「お主ら、そろそろ―――ん? 姉上?」
イシュが二人の仲裁に入ろうとすると、先にシュガルが動いた。
「シュガル様?」
ネガルの後ろまで行くと、シュガルはドレスに手をかけた。
「え? シュガル様?」
嫌な予感がすると言わんばかりに狼狽するネガル。そんな様子の彼女をよそにシュガルの表情は普段と変わらず涼しいものだ。
そして、シュガルは、
「あ」と、口が閉じなくなったイシュ。
「え?」と、事態を飲み込めていないネガル。
「――――――」と、言葉すら出なかったスィン
かけた手を勢いよく下げた。
つまり、ネガルのドレスを脱がしたのだ。
それにはシュガル以外の三人は絶句。脱がされた当人であるネガルさえも言葉も出ず、固まってしまった。
「はい。これで、ネガルが女の子であることが分かった?」
コクコクコクコク!
と、耳まで真っ赤にしたスィンは力強く頷いた。ネガルはネガルで顔を染めてそそくさとドレスを着なおした。
「………だったなんて………」
ボタボタと涙を零しながら、スィンは崩れた。
「本当に女だったなんて…………僕の、僕の………」
スィンの言動にイシュは一つの仮説を立てた。そして、悪魔的笑みを浮かべる。
「スィンよ。お主に一つ提案がある――――――」
と、崩れたスィンの耳元で何かを囁く。
「お、お前は何を言っているんだ! そ、そんなこと許されるはずがない!」
勢いよく立ち上がり、抗議の声を上げる。しかして、その貌を憤慨とは別の色に染まっている。
「しかしだ、お主にとっても悪い話ではなかろう? ただ、国を捨ててもらえればそれだけいい」
「そんな簡単な話じゃない! 国を捨てるなどあり得てはいけない! そんなこと許されていいはずがない! よもや、自らの命と煩悩の為になど、あり得ない!」
スィンは一歩後退る。それは、自らの決意が揺らぐことのないように。これ以上イシュとの会話を続けない為に。
逆を言えば、彼女はこれ以上イシュとの会話続けようものなら決意は崩れてしまうと、示していたのだ。
「では、交渉は決裂か?」
イシュも彼女の意図を察していた。しかし、これ以上の交渉は時間の浪費だと割り切った。
「当然だ! 僕の国への、如いては国王への忠誠を甘く見ないでもらいたい!」
「そうか、では――――ネガルよ」
声を掛ける。すると、ネガルは瞬きも許さぬ間にスィンの後ろへの周り、手刀を以てスィンの意識を断った。
「さて、少しは静かになったな」
ネガルはスィンを抱きかかえた。




