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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
第二部 2章 追想

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05

 彼女は手にする短剣で魔物の凶刃を受け止める。しかし、体格差は埋めようがなく。その差が彼女を徐々に押し込まれていく。

 そして、その時は来てしまった。


 魔物が右腕を振るった。


 ヒュン、と風が鳴る。

 それは噴き出した。

 景色が染まる。

 今まで見たこともない鮮烈。

 今まで感じたこともない恐怖。

「――――――」

 私は声もなく悲鳴を上げる。

 身体がズレた。

 イシュ様の身体がズレた。

 左肩から右腹にかけてがズレた。

 そんな非現実的な光景。

 握られた短剣はそのままに、彼女はその身体を二つに切断されたのだ。

「イ、シュ………様…………」

 そんな言葉と涙だけが零れた。

「肉体からの解放、魂の牢獄…………」

 イシュ様の後ろに隠れていた少女が何かを言った。

「安然の世界。地を堕とし、今ここに冥府の顕現を………」

 詩の様に言葉は尚も紡がれる。

 少女の手元に光が灯る。それに気が付いた魔物が、左腕を振り上げる。

「私は冥府の主人とならん。死者は須らく、その全てが私の物だ」

 今度こそ、私は地面を蹴った。

(間に合え!)

 少女は動かない。

 魔物はその凶刃を振るう。

「死に、滅び、腐敗せよ――――冥府の檻は(クル・)死を内包する(アルラトゥ)!」

 少女はその目を見開いた。

 濁った琥珀色の瞳が真っ直ぐに魔物を映す。すると、

「――――え?」

 魔物は卵のような籠に囚われていた。

 籠の中で魔物は逃れようと暴れる。凶刃を振り回し籠を破壊しようと試みるも、籠に触れた部分から腐敗していった。ボロボロと体は朽ちていく。

 いずれ、魔物の身体その全てが腐敗して、籠の中で朽ち果てた。

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