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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
第二部 2章 追想

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04

 いつものように訓練を終え、修行の場としている森から帰ろうとした時だった。遠くから少女のモノと思える悲鳴が聞こえた。

 私は居ても立っても居られず、悲鳴の聞こえた方へと駆けた。



 辿り着いたそこは、森の入り口、帝都へと続く道だった。

 そして、そこには二人の少女がいたのだ。

 一人は尻餅をついて酷く怯えている。その目をぎゅっと瞑り、声もなく泣いている。

 もう一人は、怯えている少女の前に立ち、頼りない短剣を手にして守ろうとしている。その目は力強く目の前の脅威を睨みつけている。そんな少女に私は見覚えがあった。

 そして、そんな彼女たちの前には、一体の異形があった。


 その姿はカマキリに似ている。

 腕は鎌状になっており、全身が鎧のような甲殻に覆われている。その尾は蠍の物で、その頭部は人間の物だった。

 人間の頭にカマキリの腕、甲殻に覆われた躰、蠍の尾。そんな醜い化け物が少女の前に迫っていた。

「お前のような魔物、次期皇帝のあたしが切り伏せてやる!」

 短剣の少女は自身を鼓舞するかのように叫ぶ。

 彼女は、次期皇帝候補のイシュ・アッガシェル様。齢7歳の幼子だ。そんな彼女は怯える少女を背に、大人すら逃げる魔物を前に一歩も引かずに立ち向かっている。

 私はそんな彼女と魔物を前に足がすくんだ。

 あんなものに敵うはずがない。

(貴女のような子供では弄ばれて殺されるだけだ……)

(逃げて!)

(貴女はこの国の皇帝になる人だろ!)

(こんなところで死んじゃいけない!)

(お願い、逃げて!)

 そこで私は、自分の声が出ていないことに気が付いた。

 掠れた嗚咽のような物だけを吐き出す。

 叫びは届かない。

 イシュ様の後ろで少女は必死に地面を画く。

(逃げて……………逃げろ………逃げろよ!)

 私の叫びが音持つことはなく、魔物は咆哮し、左腕を振り下ろす。

「―――――――――――――ッ!」

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