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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
始まりの神話
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 世界がまだ生まれて間もなく、光と闇だけが渦巻き、混沌しかなかった頃。そんな場所に二人の原初が生まれ落ちました。それは後に、大いなる母(ティアマト)大いなる父(アプスー)、と呼ばれる大いなる存在でした。


 二人は混沌しかなかった世界に、自分たちの世話役としての従僕を生みました。それはムンムと呼ばれました。その後、ティアマトは二人の仔供を生みました。名はラフムとラハムと言います。


 ラフムとラハムは子供を生みます。アンシャルとキシャルと言う名前でした。アンシャルとキシャルも子供を生みました。それ以来、子供たちは増えていきました。


 光と闇だけが渦巻き混沌しかなく、静寂ばかりが支配していた世界に子供たちの活気ある声が満ちていきました。ティアマトはそれを微笑ましく眺めていました。この時がいつまでも続けばいいと、そう願っていました。


 しかし、それは長くは続きませんでした。


 アプスーが子供たちの喧騒を疎ましく思い始めたのです。アプスーはムンムと共に、子供たちを滅ぼし世界に静寂を取り戻そうと計画しました。それを知ったティアマトは夫に付くべきか子供たちに付くべきかを悩みました。


 そして悩んだ末、子供たちに付くことにしました。彼女は、その時子供たちの中で一番力を持っていたエンリルに、二人の計画を告げたのです。するとエンリルはすぐに行動を開始しました。仲間を集め、アプスーの寝こみを襲い、ムンムを魔術で封印しました。そしてアプスーの大いなる体の上に自分たちの住む城を作り上げたのです。


 エンリルはその功績から、子供たちの王となりました。




 時が経ち、一人の人間が生まれました。その者はマルドゥクと呼ばれ、人間でありながら、七つの大いなる風と大いなる水の力を持って生まれてきました。


 その頃、世界にはティアマトの生み出した人間以外の生き物も増えていました。獣に魚、昆虫に植物、亜人に魔獣。様々な生き物が世界を満たしていたのです。ティアマトは仔供たちを生み続けます。それだけが彼女の喜びだったのです。


 しかし、その行為を(よし)としなかった者がいました。それがマルドゥクです。


 マルドゥクはティアマトの無尽蔵に生命を生み出す行為を嫌悪しました。そして遂には、仲間を集め、大いなる母たるティアマトに反旗を翻したのです。


 ティアマトは人間たちに対抗するために、力を持った十一体の獣を生み出しました。そして十一の獣の指揮官として、自らが愛する唯一の子として、キングゥと呼ばれる者を産み落としました。


 ティアマトとキングゥ、そして十一の獣は、マルドゥクの率いる人間と永きに渡り戦いました。しかし、マルドゥクの大いなる七つの風と大いなる水の力によって徐々に劣勢に追い込まれていきました。遂には指揮官であるキングゥがマルドゥクに討たれてしまったのです。


 それを知ったティアマトは激昂し、自らを世界すら喰らうことが出来る大いなる竜へと変化させました。その巨大な口でマルドゥクを食べてしまおうとしたのです。


 しかし、マルドゥクは大いなる七つの風を以て、ティアマトのその巨大な口を固定し、閉じられなくしました。そしてその開いた口に戦斧を通し、ティアマトの身体を二つに割いてしまったのです。


 そうして、ティアマトは死に、十一の獣は敗北したのです。


 戦いの後、マルドゥクは二つに割いたティアマトの身体を使って、新たなる世界を創造しました。上の半分を天に、下の半分を大地に、そして両手両足は天地を支える巨大な塔に。その血は海に、その涙は川になりました。


 新たなる世界を「ウェールス・ムンドゥス」と「フィクティ・ムンドゥス」とに分けました。「ウェールス・ムンドゥス」には四季があり、人間が繁栄する場所として。「フィクティ・ムンドゥス」は十一の獣たちを幽閉する場所として。


 この戦いの功績から、マルドゥクは勇者として崇められるようになりました。


 以後、マルドゥクは度々転生し、「フィクティ・ムンドゥス」より襲来する十一の獣たちから、「ウェールス・ムンドゥス」を守っているのです

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