私、めんどうなのはごめんです。
「……様、マリー様!聞いておられますか?」
「えっ、ええ、もちろんよ?」
「それならいいのですけど…お疲れのようでしたので、心配ですわ」
「大丈夫よ、ごめんなさいね」
いけないいけない、私ってばボーッとしてたわ。しっかりしないと。
「こんばんわ、マリーさん!」
はっと振り向くと、聖女様とハルト殿下がいた。
もう最悪すぎる…しっかりしないとって思った途端に疲れの元凶に会うなんて…。
「こんばんわハルト殿下、聖女様。ご挨拶が遅れて申し訳ございませんわ」
「やだ、気にしないでよー!そんなの堅苦しくて嫌になるわ!」
「はぁ…ありがとうございます。…あの、聖女様」
「なによ?なんか用?」
「もう少し淑女らしく、言葉使いを淑やかにした方がよいのではないかと。パーティですので、他の方もおられます」
聖女様は身分制度のない『ニホン』というところから来たからか、なんというか、貴族のマナーに大らかでいらっしゃる。
「は?なにそれ、あたしにたてつくわけ?!何様よ!?」
聖女様が突然ヒステリックに叫ぶ。
えー…なんでそんないきなり怒ってんの。
その声につられてパーティ会場内の視線が私たちに集まるのを感じた。
私なにもしてないのになぁ、なんて現実逃避気味に考える。
「そういうわけではございません、私はただ…」
「マリー、貴様見苦しいぞ」
「ハルト殿下…!」
私の声を遮ってハルト殿下が出しゃばってきた。非常にめんどくさい。
そもそも、私よりも聖女様の行動の方が問題あると思うんだけどな。そっちには目がいかないらしい。
「アリサから聞いたぞ、お前がアリサを虐めているとな。どういうことか説明してもらおうか?」
……???
謎の婚約破棄に引き続き、何言ってんのか理解できない。ハルト殿下ってこんな人だったっけな。もう少し賢い人だったと思うんだけどなぁ…。
周りの人もじっと見る人こそいないものの、みんなに聞こえているに違いない。
近くにいたどこかの令嬢も、いつの間にかいなくなっている。
最悪の状況だ。
聖女様って、アリサって言うんですね。
私はまた現実逃避気味に考えるのであった。