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織田対徳川開戦間近

天正三年(1575年)三月

出雲

朝廷から一条と織田家から長秀が来ていた。

約束の面会である。

二人が信長の前に行くとすぐに逃げ出したくなった。


信長の怒りが爆発する寸前のようで誰も声をかけられなかった。


「えーご覧のように信長殿は無事ですので...後は三人でどうぞ...」

そう言うと案内役の山崎吉健は部屋を脱出した。彼もまたすぐに逃げ出したかったのである。


「の、信長殿の生存も確認できたので麻呂も失礼するぞ」

と一条も逃げ出したのである。不幸にも織田家代表として来てしまい残された長秀は内心どうやって逃げるか必死に考えていた。


「の、信長様ご無事で何よりにございます」

長秀は何も言わないのもまずいと思い声をかけた。

「長秀~...貴様らは一体何をしておったのだ」

信長は怒鳴るのを我慢していた。

「な、何をとは一体なんのことでしょうか?」


長秀には信長の言ってる意味が分からず聞いてしまった。しかしこれが信長の怒りを破裂させてしまった。


「貴様ら重臣は揃いも揃って一体何をしていたと言っておるのだ!」

長秀は反射的に謝罪した。


「も、申し訳ありません!し、しかし何のことか分かりませぬ」

長秀は信長の怒りに火に油を注いでしまう。


「信忠の暴走を何故止めなかった!!そのせいで家康が敵になったのだぞ!!」

「な、なんですと!!」

長秀は徳川が敵になったことを知らなかった。


家康の元に使いとして行った林はのらりくらりと返事を引き伸ばされていた。

「尼子の元に竹千代の使いが来て兵糧を送ってもらう確約を得て帰っていったわ!書状を読んだが信忠のしたことは誰が考えても裏切る原因になるであろうが!!」


信長は信忠の愚行に加え、徳川が裏切ってることを知らなかったことに更に怒るのであった。


「お、恐れながら、信忠様を止めることは出来ませんでした。止めに入った恒興は無理やり隠居させられ、現在も半ば謹慎させられております」


それを聞いた信長は目の前に信忠がいたら殺しかねないでいた。


「他に情報は無いのか?隠し事は許さんぞ」

長秀は震えながら答えた。


「信忠様は能登、加賀を上杉に差し出して十年の停戦を希望し、徳川を家臣として武田を呑み込もうとされております。私は知らされてなかったのですが北条とも繋がろうとしておいでです。更に十年後には尼子と再度決戦をするおつもりのようです..」

長秀は伏せたまま言ったが、信長の怒りが頂点に達したことが分かった。


「長秀、上杉には人質として四男、於次丸おつぎまるを差し出して交渉しろ。これ以上領地を減らすな。家康にもすぐに詫びる使者を出せ。家康を敵に回すな。あやつでは勝てぬ」

「ははぁ!」


「最後に尼子とはこれ以上敵対するな。何の為に決戦を挑んだのか分かっていないのか」


この事に長秀は、驚いた。信長の口から尼子とは敵対するなと、言ったからだ。


「恒興が言っておりました。これ以上差を広げられる前に尼子を倒す為だったと」


「恒興には全て話しておいた。しかし信忠はその忠告を無視したのだな...」


長い沈黙が流れた。


信長は怒りが頂点を越えると沈黙することがあった。それは殺すから最早何も言うことはないと言う現れだった。


今回初めて息子に対してそれが出ていたのであった。

長秀はその事にゾッとし信長の許可なくば何も言えなくなった。


「長秀」

「は、ははぁ」

「書状を書く、それを全ての家臣の前で読め。

書状の内容は絶対だと伝えよ」


「は、ははぁ!!」


こうして恐怖の面会は終わり長秀は急ぎ岐阜に向かった。


天正三年(1575年)五月末

長秀は岐阜城にいた。

「父上の様子はどうだった?」

「はっ、代わりなくお元気にございました。しかし右腕は最早、動かぬようです。それと、殿の命で全ての家臣を集め書状を読めとの命令を受けております。読むその時まで決して開けるなと」


「分かった。皆を集めよう。徳川は未だ返事をせず、上杉は能登を落としたそうだ。最早時間の問題だ。早く結ばねば」


「ははぁ」


数日後

天正三年(1575年)六月

織田家家臣が集まった。


「これより父上からの書状を読む。長秀読め」

「ははぁ...それでは開けさせていただきます」

そう言うと書状を開き読み始めた。


「織田家の方針は尼子とはこれ以上の敵対をせず、和平を探り東を制圧していくこと」


これにはどよめきが走ったが長秀は黙らせた。


「上杉家には四男、於次丸おつぎまるを人質として差し出し、決して領地を与えるな」

これは皆納得した。


「徳川は信忠の愚行により反織田となった。すぐさま謝罪の使者を送り関係をやり直せ。決して戦をするな」


「なんだと!」


信忠を始め多くの者が声をあげた。徳川が既に裏切っていることに驚いた。そしてそれを知っていることに。


「また、今回の件の責任を取らせ信忠を謹慎処分とし、織田家は重臣達の合議で進めることとする。これは命令であり、絶対である」


長秀は読み終えた書状を全員に見せた。


信忠は長秀から奪い取り内容を再度見たが読んだ通りだった。


「納得できん!なぜ、謹慎せねばならぬのか!」

信忠は怒声をあげた。考えて動いた筈なのに何故ここまで反対されねばならぬのか。


「信長様は完全にお怒りでした」

長秀は会った時の様子を伝えた。


「謹慎もですが、徳川の件は如何しますか?」

貞勝が言うと青い顔をした林秀貞がすぐに謝罪しましょうと言った。


「信忠様、申し訳ありませんが大殿の命ですので...」

長秀は言うと信忠は震えていた。


「認めん...俺は認めんぞ!全員命令だ!すぐに戦の準備を行え!」

「信忠様!何をおっしゃるのですか!」

光秀は慌てた。


「黙れ金柑!徳川を討つ為だ。直ぐに準備せよ!」

「はっ!」

信忠派の人間は信忠の命令で動いた。


「ま、待て!信長様の命令じゃ!戦をしてはならん!」

秀吉は、出口で止めようとするが身長も小さく、小柄な為、吹き飛ばされた。


「今の織田家当主は私だ!文句がある者は謹慎しておれ!」


信忠は、そう言うと自身も戦の準備に向かった。


残ったのは尼子と戦った、丹羽長秀、明智光秀、羽柴秀吉、細川藤孝、佐々成政、前田利家などと、村井貞勝と林秀貞だった。


「丹羽殿、このままでは織田がまずいことになります」


藤孝は、織田が割れることを危惧した。


「しかし、信長様の命を無視などできぬ!」

長秀は、なんとかしたいが思いつかなかった。


「私は上杉に向かい、殿の命令通り人質を出すことで締結できないかやってみます」

村井貞勝は上杉領に向かうことにした。


「ここは信長様に会って報告しなければお家の大事となりましょう」


光秀は、なんとか信長に会わねばと思っていた。


「尼子へ向かいましょう。私と光秀殿、秀吉殿の三人でです」

長秀は出雲に向かうことにした。


「しかし、手ぶらでは問題です。何か手土産を用意しなければ... 」


「次の面会は何時だ?」

「朝廷の関係で十二月です」

まだ時間があった。


「勝手に信長様の持ち物に手をつけることになりますが1つ手土産にいい物があります」

藤孝は、思い出していた。一つ義久に、縁がある物があることを


「なんですかそれは?」

秀吉が聞くと


「九十九髪茄子です。あれとなにかもう一つあれば会わせてくれるはずです」

皆驚き悩んだが背に腹は変えられなかった。


「わかった、直ぐに向かおう」

こうして三人は向かっていった。

残された者は謹慎しながら情報を集め、武田が動いた時に備えた。


一方その頃、徳川領三河に沢山の大型船が止まっていた。

ガレオン船三隻。

キャラック船四隻。

計七隻だ。全ての船に尼子の旗が掲げられていた。

「商談の代表の金衛門と申します。此度は義久様の命で綿花の質を確認する為に参りました」


「私が領主の徳川家康だ。こちらにあるので、どうかよろしくお願い申す」


「はい。それでは確認させて頂きます」

かなりの量があったので確認に五日かかった。

その間に兵糧は下ろし終わっていた。


「これだけあれば十分戦える!」

徳川家臣達は士気が上がっていた。


「えー確認が終わったのですが、ここにある全ての綿花をこの度貰いましたら、価格的にそちらに損が出ます。量で言えば船の三分の一位は兵糧が増えることになりますが戦になれば運び入れることが出来ませんのでいかが致しますか?」


家康は正信と相談し先払いし、戦後もしくは、こちらが頼んだ時に持ってきてもらうことにした。


「金衛門殿、一つ頼みがあるのだが、この者達を義久殿の元に連れていってくれぬか?」

そう言うと産まれたばかりの子供とその母親そして侍女が来た。


金衛門は悩んだが、利益になる気がしたので承諾した


「分かりました。ただし、海は危険ですので仮に命を落としたとしても恨まないで下さい」

陸路に比べ海はかなり危険の多い旅だった。


「分かりました。それとこの書状を届けていただきたい」

「分かりました。必ずお渡しします」

金衛門達は全ての綿花を積み込み帰っていった。


伝令が走ってきた。

「殿!織田が戦の準備を始めた模様!恐らく我々を攻める気です!」


「正信、武田とは不可侵を結べたのだな?」

「はい。条件は織田と対峙している間ですが他の条件は無しで結べました」


「元忠、守りは万全か?」

「はっ!改修は全て終わってます」

家康は頷き今いる家臣に伝えた。


「我らはこれより織田と戦う。兵糧も十分ある。三河武士の生き様を織田の奴等に見せつけるのだ!」


「おおぉぉぉ!!」


徳川軍の強さを世に広める戦が始まろうとしていた。

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