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尼子最高傑作(船)徳川との密約

天正三年(1575年)一月

信長との対話から一ヶ月経った。

信長を連れて隠岐に来ている。

勿論、護衛と見張りに千人連れてだ。

何故か帰蝶まで付いてきていた。


隠岐までは鉄甲船で来たが信長は勝久の情報で知っており、織田家でも造るように指示をしていたので驚かなかった。


俺は一番大きい建物の中に案内した。

「信長、これが尼子の技術の中で最高傑作の蒸気船だ!」

そこには安宅船やガレオン船より、遥かに大きい船があった。


しかし、この時代では異様と思える代物だった。

「なんだこの船は?」

信長と小姓の二人は不思議がった。


船の横に外輪がついており、真ん中くらいに大きな筒のような物がついていた。


「信長、乗ってみれば分かる」

俺はそう言って連れて来た者を船に乗せた。

「殿、信長に本当に見せてよろしかったのですか?」


「そうですよ殿、これは鉄甲船なんかよりも遥かに重要なものですよ」


尼子水軍大将の熊谷新右衛門と隠岐水軍大将隠岐為清は情報が洩れるのを危惧していた。


「詳しいところは見せなくていい。この船の凄さだけ分からせてやれ」

俺はそう言って二人に出港を指示した。


この船は現代で言う黒船だ。

動き出して信長はすぐに驚いた。


「義久!これはどうやって動いているのだ!」

信長はすぐにこの船の凄さが分かった。 風や波に関係なく自由に進んでいる。これは敵と交戦してもいつでも好きな所に行き、敵を砲撃することができる。


「新右衛門、速度を上げろ」

そう言うと新右衛門はすぐに部下に指示をして速度を上げさせた。


「うおぉぉ!」

速度が上がり何人か転がった。


「落ちるなよ!!しっかり捕まっておけ!」

新右衛門が大声で指示をする。


少しの間だが蒸気船出雲を動かして信長に見せつけることができた。降りた後の信長からの質問攻めの方が大変だった。


「あれは南蛮の技術なのか!この技術をどうやって手に入れた!何故、貴様の元にはこんなにも集まるのだ!」

など、色々いっぺんに言ってきたので


「そんなに一気に答えられるか!!」

と怒鳴った。


「まず、この技術は尼子だけの物だ。元の技術は南蛮の物だがな。なぜ集まるかだが、日々南蛮の技術を研究してそれに日本の技術を注ぎ込んで新しい技術を産み出しているからだ。お前の陣地を吹き飛ばした大筒もその一つだ」


俺が一気に答えると信長は黙っていた。いや何も言えなくなったが正しい。信長はこんなのを相手にしていたのかと今になって思ったのであった。


そんな中、直景から使者が城に来ていると連絡が来た。使者の名前を聞いて驚いた。


「信長、お前の息子が何かやらかしたかもしれんぞ」

「なに?」

俺は城に戻ったが、信長も付いてきたので護衛と監視も付いてきた。


部屋に入ると一人の男が頭を下げて待っていた。


信長は見たことはあるがどこの誰だか分からなかった。


「待たせたな。それで要件は何だ?」

男は顔を上げると信長がいることに驚いた。


「な、何故、信長様がここに!」

男は驚き後退りした。


信長は誰だかやっと思い出した。


「貴様!竹千代(家康)の護衛ではないか!何故ここにおる!」


男の名は服部半蔵正成。二ヶ月前に伊賀を出て今辿り着いたのであった。


「半蔵殿、先程の問いですが、さっきまで信長と船遊びをしており、そこに貴方が来たと言う報告を受けたのでここまで付いてきたのです」

とやんわりと説明した。


「貴様!何しにここに来たか答えろ!!」

物凄い怒気で半蔵に、近付いて行ったので隆基に、物理的に確保させた。


「信長、騒ぐなら出ていってもらうぞ」

そう言うと信長は落ち着こうとした。


「さて、半蔵殿、此度は何用かな?」

半蔵は信長を見たりしながら


「願わくば、信長様を外していただきたい」

そう言ったので信長を見たが動く気は無いようだった。


「動かぬそうだ。それで要件は?無いなら終わるぞ」

半蔵は気まずそうな顔をして書状を渡してきた。


「主からの書状にございます」

直景が持ってきて見ると面白いことが書いてあった。


三河で生産した綿花を売るので兵糧を送ってもらいたい。また、武器等も販売してほしい。我らは信忠の振るまいに我慢ならず反織田となるなどと書いてあった。特に信忠の振るまいに関しては長く書いてあった。


読んでいて、俺でも我慢ならんなと思った。

「分かった。木綿を買い取り兵糧を送ろう。ただ、武器に関しては今回は見送らせてもらう」


俺が言うと信長がなんと書いてあったか気になるようでこちらに来ようとしていた。隆基はそれを押さえ込んでいた。


「信長、お前の息子は余程敵を作るのが上手いようだぞ」


と書状を信長に渡した。半蔵は「あっ!」と言っていたが無視だ。


信長の顔が見るみる赤くなっていった。


「竹千代め!!俺を裏切ったか!!」

信長の怒号に護衛をしていた者が一斉に入ってきた。俺は護衛を止めて戻るように伝えた。


「信長、最後まで読め。これをやられては俺だって我慢ならんぞ」

そう言って続きを読ませるとまた見るみる赤くなり爆発した。


「信忠の大馬鹿者が!!」

そう言うとどこかに行こうとしていたので


「信長、どこへ行く?」

「尾張に戻る。信忠の馬鹿をどうにかしなければ...」


「信長を押さえろ!!」

護衛が一斉に信長を確保しに向かった。


「離せ!離さんか!」

信長は暴れるが片腕は動かないゆえ十人の鬼兵隊兵に押さえ込まれては何もできなかった。


「信長、再来月まで待て。そうしたら、織田家の者に会えるからその時に聞け。者共、信長を屋敷まで運び、監視を強化しておけ!」


「はっ!」

「離せ!離せ~!」

信長の叫び声は遠くまで届いた。


(さてと次)


「半蔵、輸送はこちらが船を出そう。船だと回ってから行かねばならぬから半年後までに三河に着くようにする。それまで準備を頼むと伝えてくれ」


「かしこまりました。よろしくお願い致します」

そう言うと半蔵は急ぎ三河に帰った。


(さて、家康がどう動くか見物だな...)


これから数ヵ月後織田と徳川が激突することになるがこの時はまだ分からなかった。


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